
花のかず
夢見たものは・・
ひとは行くところがないと
花のそばにやってくる
花は 咲いているだけなのに
水は ひかっているだけなのに
花のかずを かぞえるのは
時をはかる方法
ながれる 時の長さを
ひとは群れからはなれると
花のそばへやってくる
花は 黙っているだけなのに
水はみなぎっているだけなのに
夢見たものは ひとつの幸福
ねがったものは ひとつの愛
山なみのあちらにも
静かな村がある
明るい日曜日の 青い空がある
日傘をさした 田舎の娘らが
着飾って 唄をうたっている
大きなまるい輪をかいて
田舎の娘らが踊りをおどっている
告げてうたっているのは
青い翼の一羽の 小鳥
低い枝で うたっている
夢見たものは ひとつの愛
ねがったものは ひとつの幸福
それらはすべてここに ある と
「名詩の絵本」より

岸田衿子
立原道造