私の本棚

身体から宇宙まで歌を通して見はるかす 松村由利子著 「31文字のなかの科学」より
レンズ下に美(は)しく狂える細胞は花むしろ様配列(ストリフォルム)という名を持てり 久山倫代
作者は顕微鏡で腫瘍細胞を見ている 「花むしろ」という美しい名称だが「狂える」は恐ろしいばかりの勢いで
増殖する様を表している その名と裏腹な腫瘍の残酷さを思うのであろう
いやはての生きものの鳴きを聞きにけり夕かげせまる実験室に 岡山 巌
松村由利子さん
「高校時代は物理も化学もろくに勉強もせず
大学では英文学を専攻していた私にとって
科学記者を始めた頃は毎日新しい知識との
出会いだった 初めて知る酵素の名前一つで
あってもその響きの美しさに魅了された・・・
科学記者をしていたころの自分の感動を
伝えたい その興味深い世界を味わいながら
科学と短歌の魅力を紹介したい」と
この本を出版したそうです
宇宙から細胞 見えない世界・・
本を読んで思いをはせるだけですが
私もそんな心の旅をしてきたので
とってもわくわくして読みました
短歌の世界には縁はなかったのですが
エッセイのなかで こうして解説もして
くれているので私にもわかりやすく
宇宙や細胞を見つめた人たちの心の世界や
感動に少しでもふれることができました
興味を持って楽しんでいるとこういうふうに
出会いがあります しあわせです
「いやはて」は「最後」という意味である 研究のためにやがて解剖される 実験動物の声を聞きながら
この作者は動物たちにすまない思いでいっぱいになっている 刻々と暗くなってゆく実験室と
暗くなる作者の思いが重ねられている
雪の降る惑星ひとつめぐらせてすきとほりゆく宇宙のみぞおち 井辻朱美
地球の誕生する条件が少しでも違えば 水はあっても雪は降らない惑星だったかもしれない
それを思うと 寒くなると湖に氷が張り雪片がちらつく「雪の降る惑星の」なんと美しいことかと改めて思う
パソコンを開けばいつもそこに在る火星の空の青き夕焼け 香川ヒサ
火星の大気には微小なダストがたくさん浮遊している ダストは波長の長い赤い光を散乱するため
日中の空は赤く見える そして夕焼け空は地球と反対に赤い光が削られるため青く見えるそうだ
われらみな宇宙の闇に飛び散りし星のかけらの夢のつづきか 沢田英史
宇宙の闇に飛び散った星のかけら 私たちの体や身の回りのものを構成している元素を生み出したのが
星だったなんて なんと遙けくも嬉しいことだろう 「夢のつづき」はとらえどころもない