あなたの鹿が
あのビロードの森に
隠れてしまって さみしいの
どうか 温かいシチューをめしあがれ
それから二人は 額縁の中
ビロードの影と光をはんぶんこ
ラベンダーのかおりもビロード
ヘンデルのオルガンもビロード
だまってる鳥にも 横向いた人にも
ビロードの風 ビロードの秋

「ビロードの村」
岸田衿子
ビロードの村がありました
お日さまの矢も
月のしずくもビロード
人のため息も 鳥の声も
足音がしても 涙がこぼれても
ビロードのこだまばかり
いつでも 深い帽子かむった
少年のあとから
鹿やきじがついてくる
ビロードのいなかの王子さま
村の娘は
ことことシチューを煮て待ってます
